A-cars Historic Car Archives #008
'70 Plymouth Barracuda 'Cuda 426HEMI
●70年型プリマス・バラクーダ・クーダ 426HEMI
Text & Photo : よしおか和
(HEMI_The Ultimate MOPAR Muscle/2012 Sep. Issue)
May 31, 2024 Upload
NASCARによるホモロゲーション規定(67年から69年までが500ユニット、70年からが1000ユニット)は、レースに出場するモデルと搭載するエンジンに対してそれぞれ課せられたが、必ずしもそのすべてがレース出場車と同じ組み合わせでなくてもよかった。わかりやすく言えば、70年型のスーパーバードが1000台以上の市販を義務付けられる一方で、426HEMIの1000基はスーパーバード以外のモデルに搭載されてもOKだったのである。ちょうどこの70年型では新型のEボディ、ダッジ・チャレンジャーとプリマス・バラクーダが発表されており、そのホット・バージョンにも426HEMIをインストールしたモデルが設定されたが、NASCARのホモロゲーションのことを考えれば、それは実に自然な成り行きだったと言えるだろう。
ポニーカー・サイズのEボディにもともとがレース・エンジンであるHEMIを組み合わせれば、オーバー・パワーなマシンが出来てしまうのは間違いない。だが、まさに時代はV8パワーウォーズの絶頂期であり、多くのスピード狂たちがそれを求めたこともあって実現したのだろう。パフォーマンスを愛好する人間にとっては、本当にいい時代だったのだ。
このHEMIクーダに代表されるようなモデルたちに“マッスルカー”という呼称が与えられたのは80年代になってからのことだが、そこからさらなる時を経て、コレクタブルカーとしてのバリューも信じられない程に高騰している。現在では、MOPARファンに限らず、カーGUYならば誰もが羨む1台と言って間違いないだろう。
クーダに426HEMIを搭載した場合、基本的にはシェイカー・フードが標準で装備された。これはエアクリーナーを包み込むエア・イン・スクープで、アイドリング時にこれが小刻みに震える様子から“シェイカー”とネーミングされた。なお、兄弟分のチャレンジャーにおいては、HEMIカーであってもこのシェイカー・フードはあくまでオプションとして設定されていた。
ボディカラーはコードFJ5のライムライト。同色にペイントされたウレタン製バンパーはオプション・アイテムである。またこの年のクーダの特徴的なアイテムであるホッケースティック(ボディ・サイドのデカール)には搭載エンジンを示す数字がデザインされるが、426HEMI搭載モデルに関しては“HEMI”という文字が誇らし気に描かれる。
HEMIクーダはフロント・フェンダーのオープニングのR形状が標準のクーダとは若干違っており、俗にHEMIフェンダーと呼ばれたりもする。だが、その差は実際に並べて比較してみなければ分からない程度の違いである。
リア・エンドはDANA60+シュアグリップという組み合わせ。
オリジナルのHEMIカーだけあって、細かなディテールにもソツがない。例えば70年型には70年型だけの独自のスポーツミラーが与えられるのだが、撮影車はその見本となるようなオリジナル・パーツをキッチリと備えている。
この70年型から、MOPARのマニュアル・トランスミッションには独特なデザインのシフターが与えられた。それがこの“ピストル・グリップ”で、遊び心がくすぐられるからか、MOPARマッスルのファンからも人気の高いアイテムだ。ちなみに70年型HEMIクーダのプロダクショントータルは666台。そのうちマニュアル・トランスミッション仕様のクーペは284台と記録されている。