A-cars Historic Car Archives #014

'67 Ford Mustang GTA Convertible

●67年型フォード・マスタング・GTA・コンバーチブル


Text & Photo : よしおか和

(FoMoCo Classics Special/2007 Feb. Issue)

July 5, 2024 Upload

 67年型で変身を果たしたマスタングは、基本となるシャシーはそのままに、若干大型化されている。外観ではヘッドライトベゼルの形状が変わり、抉れ具合が派手になった。それと同時にエンジンフードがより前方に突き出して、全体的にワイルド感を強めた印象がある。だが、実はこういうカタチに至った最大の理由というか目的は、ビッグブロック搭載を前提にエンジンルームの容量を拡張することにあった。そう、このモデルイヤーよりFEブロックの390ユニットがオプションとして追加されており、今回撮影した車両はまさにそれを搭載した1台なのである。

 前出の66年型と比較すると、冷却効率を考えてラジエターコアサポートの開口部分もひとまわり大きくなっており、ヘビーデューティな仕様に対応していることがわかる。また、先に基本的なシャシー構造は変わらない、と記したが、厳密には細かな部分が変更されており、より大きなフロント荷重に耐える設計になっている。ちなみに、翌68年型にも390GTはそのまま継承されており、そのファストバックモデルが例の映画『ブリット』でサンフランシスコの坂道を駆け抜けたわけだが、さらに同年には428コブラジェットなるユニットも用意されるようになり、こちらはNHRAドラッグレースにワークス参戦を果たしたスーパーストックに代表されるところだ。

 

 

 さて、撮影車に話を戻すが、フロント同様、リアフェイシアのデザイン変更も非常に印象的だ。トランクリッドの先端にはモールディングが施され、それがクォーターパネル最後尾のエッジとともに絶妙なる曲線を描いている。そしてバックパネルは内側に緩やかに抉れ込み、大胆になったフロントマスクとのバランスを取っているところがニクイ。フェンダーの張り出しも若干ではあるが大きくなり、実際に全幅もトレッドも2インチ以上ワイドになっている。GTエクイップメントはこの年からオートマチック・トランスミッション仕様に関してはGTAというネーミングが与えられるようになり、ボディサイドのストライプの中にそのバッジが与えられた。フォグランプを備えたグリルやデュアル・エキゾーストチップと併せて、ルックスでも充分にマッスルを演出しているが、もちろん実際のパフォーマンスを味わえば一層その魅力にヤラレることだろう。最高出力は320hp。そのトルクフルな加速感は、正真正銘のジャジャ馬なのである。

 もうひとつ、このクルマで注目したいのが、ベンチシートである。マスタングのオプションアイテムとしては非常にレアであり、マニアックな雰囲気も漂うが、コンバーチブルだからこそ嬉しい仕様とも言えよう。フロントに3人掛けで仲間とドライブを楽しむもよし、ステディの肩を抱きながら星空を満喫するもよし。いずれにしても魅力たっぷりのハイパー・ポニーなのである。

 


撮影車はボア4.05×ストローク3.78インチの390cuinビッグブロックV8を搭載。エンジンルーム一杯に収まったこの光景を見れば、ビッグブロックの搭載にボディサイズの拡大が必須だったことも理解できよう。この390V8の最高出力は320hp@4600rpm。同年のエンジン・ラインナップにはこの他に200cuin直6と3種類の289cuinV8が存在した。


67年型と68年型はエンジンフードの抉れた部分に後ろ向き、つまりドライバーから見えるようにターンシグナルのインジケーターランプがセットされるのが特徴のひとつ。


撮影車はスタイルド・ホイール装着車。基本的なデザインは66年型までとかわらないが、この67年型からはトリムリングが深くなり、より幅の広いタイヤを履くことが可能になっている。同年の標準タイヤサイズは前年同様の6.95×14だったが、390V8搭載車両には7.35×14が標準とされた。


前年から大きくデザインを変更したインテリア。ダッシュの形状、インパネのデザイン、エアコンの吹き出し口の形状など、明らかに現行マスタング(編集部注=S-197)のお手本がここにあったことがわかる。取材車はオプションのベンチシートを装備しているが、これを選択できるのはハードトップおよびコンバーチブルのスタンダード・インテリア選択車両に限られていた