A-cars Historic Car Archives #030
'68 Pontiac GTO Convertible
68年型ポンテアック・GTO・コンバーチブル
Text & Photo : よしおか和
(GM Intermediate A-Body Special/2008 Jun. Issue)
Oct. 25, 2024 Upload
ポンテアックのコンパクトカーであるテンペストは61年型でデビューし、63年型では四輪独立懸架を導入して注目を集めたモデルである。ただし、これはあくまでコルベットのために開発したメカニズムをより広い市場でテストするのが目的だったようで、翌64年型のモデルチェンジで再びリアをホーシング化し、シェベルと共通のAボディを纏ったのである。テンペストのハイパフォーマンス・モデルとなるGTOはこの64年型から上級グレードであるル・マンのパッケージ・オプションとして登場し、それはハードトップだけでなくコンバーチブル・モデルにも設定された。さらに翌65年型では個性的なタテ目ヘッドライトを導入し、66年型からはよりダイナミックなボディへと変身を遂げたのである。
ここで紹介するのは更にグラマラスなスタイルとコンシールド・ヘッドライト、そして”ちょいワル”マスクを身につけた68年型である。これは明らかに前年に誕生したFボディ(=カマロ&ファイアーバード)をヒントに作り上げられたフォルムであり、デビューイヤーの64年型と比較すると全く同じシリーズとは思えないほどの進化を見せている。またこの年にはGTOが独立したモデルシリーズとなり、テンペストGTOでもル・マンGTOでもなく、ポンテアックGTOという正式名称を与えられている。
もちろんGTOがポンテアックAボディにおける最もホットなモデルであることに変わりはない。標準で400cuinV8を搭載し、ボディサイドにも6.5LITREとその排気量を示したバッジが誇らし気に飾られている。ホイールベースは112インチ(約2845mm)、全長は200.7インチ(約5098mm)。マッチョなプレスラインと共に、いかにもAカーらしいスケール感をアピールしているが、実際にドライブしてみると日本の道路事情にも充分に適応するサイズであり実に扱いやすい。そして図太いエキゾースト・サウンドとトルクフルな走りがステアリングを握る者を刺激する。取材車は細部に至るまでオリジナルのディテールを保つ貴重なグッドコンディションカーであり、是非とも長く後世に残したいリアルマッスルカーである。
68年型GTOの標準エンジンはポンテアック製の400cuinV8。ボア4.12×ストローク3.75インチで、圧縮比は10.5:1、最高出力350hp@5000rpm、最大トルク445lbft@3000rpmを発生する。さらにオプションで同じ400cuinながら360hpを発生する”ラムエア”と、366hpを発生する”ラムエアⅡ”がラインナップされていた。
GTOはこの年からヒドゥン・ヘッドライトを採用し、鉄製のレインフォース(補強材)を中に備えた“Endura”ラバーバンパーをフロントに装着。そしてツインスクープ・フードも、ル・マンには与えられないハイパフォーマンス・モデル専用のアイテムだった。
ポンテアックの14インチ・ラリーⅡリム。基本的にはシボレーと共通のGM純正アイテムだが、センターキャップにはPMD(Pontiac Motor Divisionの略)の文字が描かれる。
トランスミッションはTH400で、ハ―スト製のデュアルゲート・シフターがセットアップされている。これはフツーのATセレクターの横にマニュアル操作でシフトアップを行えるレールが併設されているもので、明らかにドラッグレース用のアイテム。マッスルカーERAとは、こんな装置が純正オプションとして用意された時代だったのだ。